2000年10月3日(木) 12:08
ストラスブール(ロイター)
ビアリッツにおけるEU首脳会談を10日後に控え、欧州委員会委員長ロマーノ・プローディはEU諸国に徹底的な改革を呼びかけ、また欧州委員会のいかなる弱体化をも戒める演説を行った。欧州連合は岐路に立っている、とプローディは火曜日ストラスブールの欧州議会の基調演説で述べた。欧州委員会は再び強力な役割を担わねばならず、経済および外交政策におけるEUの中心的な声にならなくてはならない、と語った。プローディ委員長は、委員会を迂回して合意をはかろうとするEU諸国の傾向を批判した。同委員長はまた、欧州委員会ではなく加盟国の意向に合わせて調整をはかろうとするEUの外交政策担当委員ハビエル・ソラーナの役割を問題にした。ソラーナは欧州委員会の一員であることを忘れてはならない、とプローディは述べた。プローディ委員長の演説は欧州議会において広範な支持を得た。
プローディ委員長は15カ国の加盟国に、拡大後にEUの機能が麻痺せぬよう徹底的な改革を行う必要があると、了解を求めた。「閣僚理事会における多数決決定は将来一般的にならねばならない、委員会の決定は将来はEUの人口の多数を代表せねばならない。これに加え、個々のEU加盟国間の強化された協力(先行統合)はEU条約内で容易に認められるようにならねばならない」と述べた。EUの機構改革はビアリッツで準備が行われ、ニースのEU首脳会議で決定される予定である。
EUのあらゆる成果はEUの諸機構の均衡に基づく欧州連合の政治システムの産物である、とプローディは続けた。「EU政策に対する新たな提案の発議権を持つ欧州委員会は、これに関して重要な役割を担っている。欧州委員会はEU諸国のさまざまな国民的利害を融和し、それを欧州共通の利害へと転換させる坩堝の役目を果たしている。EUのいかなる機構の弱体化といえどもEU全体の弱体化を招くのである。それゆえ私は、委員会を迂回して合意をはかろうとする加盟国の傾向を憂慮している」と同委員長は語った。
それに加えてプローディはEU内部の崩壊の危険に警鐘を鳴らした。「たとえばその一例はバルカン危機である。この問題でEUが信頼を失ったのは行動によってではなく、むしろ行動能力の欠如のためである。さまざまな政治分野に対し新たな任命委員を設けることもEU内における断片化の一例である。それゆえEU外交政策を調整するソラーナ委員が永続的に欧州委員会の外部に居を置くようなことがあってはならない。むしろソラーナ委員は委員会の一部とならねばならない。」
「経済政策の領域でもヨーロッパは一枚岩でなくてはならない。EU内での経済政策の策定は優柔不断で混沌とした欧州連合のイメージを生み出しているように思える。欧州中央銀行は独立機関である。しかし世界経済における他の立役者と異なり、欧州中央銀行はEUの経済戦略を視野に入れて速やかな決定を下すことのできる機関に支えられているわけではない。それゆえ新たな委員−たとえば『ミスター・ユーロ』−などを任命するのではなく、欧州委員会がEUの経済政策を唱導せねばならないのである。最近の石油危機もEUが諸問題に対する共同の解答を見出せなかったことを示した。」
「誰も、EUの成果が損なわれるおそれはないなどという前提を立ててはならない」とプロ−ディ委員長は続けた。「EUの機構組織の基本要素が維持できなくなれば、この成果も危うくなるのである。」
プローディ委員長の演説は欧州議会において肯定的に迎えられた。保守派の欧州国民党(EVP)の議員団長ハンス−ゲルト・ペッタリンク(キリスト教民主同盟=CDU)は「偉大な演説」と評価し、「議会はプロ−ディ委員長を支持する」と語った。社会民主党やリベラル派の議員もこの演説を歓迎した。
原題:Prodi warnt vor jeder Schwaechung der EU-Kommission